式年造替本義
若宮御造替

Nara Kasugataisha Shrine

「常日頃から、大神様から頂いておりますお恵みに感謝すること」その御恩に対して誠心誠意こころを尽くして執り行うのがお祭りです。

春日大社で1年365日、2,200回以上のお祭りを斎行、国民の幸福と世界の平和をお祈りするご奉仕を申しあげておりますが、そうした祭典の中で20年に一度、定期的に執り行われる至高最上の祭典奉仕が「式年造替」です。普段のご奉仕ではできない御社殿の大修理と御調度品の調製、それに伴う諸儀式を執り行い、真心を尽くしてのご奉仕を行なって神様に御悦びいただく。そして、より守っていただくよう、そしてより御力を発揮していただくため、神職は美しく、清浄な御殿にて、更に心を込めて国家国民のために祈り、ご奉仕を重ねてゆくこと、これが神々への祈り、御造替の原点にあります。

20年に一度の式年造替へ

今次の若宮御造替へ多くの皆様に広くご奉賛のお力添えをお願い申しあげております。

若宮社は、春日大宮(御本社)の御子神様を祀るがゆえに、大宮と同格の御本社として篤い崇敬を集めて参りました。御社殿も大宮と同じ端正な春日造であり、若宮御社殿を建て替える式年造替も、大宮と同様に20年の式年で執り行われてきました。
しかし、明治政府の管理となってからは、若宮社は御本社格の摂社に位置付けられたために式年とはならず、以降、御修繕のための不定期な形で御造替が行われてきました。明治16年、大正9・10年、昭和25年、昭和39年と明治・大正・昭和時代の120年余りで5回の御造替奉仕となり、特に前回の平成14年の第42次御造替までには昭和39年より38年もの期間があきました。
このように明治時代以降は、20年に定まらない形が続いておりましたが、今回より20年に一度の式年造替へと戻すべく、令和3・4年に第43次式年造替を実施いたします。

若宮社の御創建

摂社・若宮社は平安時代、時の関白・藤原忠通公が中心となり、皇族である鳥羽上皇のご要請、お心遣いを頂き、社会の安定と人々の幸せを実現するため、春日大社の御子神(若宮)様を御本社(大宮)の南方100m隔てた御蓋(三笠)山麓の浄地に新しい御社殿を建立し、御遷り頂き御祀り申しあげたのが若宮社の始まりです。
長承4(1135)年2月27日、御遷座の当日、京よりは鳥羽上皇の春日御幸があり、藤原忠通公やその父である前・太政大臣の藤原忠実公をはじめ百数十人が随従する錚々たる大行列で奈良に下向、国家安泰を願うに相応しい厳粛な儀式が執り行われました。
御祭神であります若宮様は、春日大宮の四柱の神様のうち、第三殿の天児屋根命様、第四殿の比売神様の御夫妻の御子神様として、平安時代中期となる長保5(1003)年に御誕生なされた神様です。その後、春日大宮で5番目の御本社格の神様(五所御子)としてご一緒に御祀りを申しあげておりましたが、その若々しい優れた霊験でもって、より人々を御救いされる御力を発揮頂くべく、多くの人々の願い、尽力で若宮社の御創建が叶いました。
当時、気候不順による凶作や疫病の蔓延のために苦しんでいる人々を救うため若宮様は絶大な御霊験を発揮され、全ての禍い事を祓い去り、その御加護により好天にして作物豊饌となり、万民ことごとく歓喜し踊ったと記されています。それほどに絶大な御力を発揮され、篤い崇敬が寄せられてきた今日では、人々の生命力を増進させ、正しい知恵を御授けくださる神様として知られる日本を代表する神社です。

春日若宮おん祭

若宮社御創建の翌年となる保延2(1136)年、時の関白である藤原忠通公が、天下泰平、五穀豊穣、万民和楽を願い、若宮様を御祀りした儀式が「春日若宮おん祭」です。

この祭礼は大和一国を挙げて執り行われる大祭として約900年間、途絶えることなく毎年奉仕されています。御神前に奉納される数々の神事芸能は国の重要無形民俗文化財に指定され、現在でもこの祭礼には1,000人に及ぶ人々の参勤奉仕があり、加えて50頭もの馬が用意されるなど、日本を代表する祭礼として100,000人を超える参詣者で賑わいます。

日本の芸能史と言われる春日若宮おん祭では、松の下式における参道の影向の松が能舞台に描かれるようになり、御旅所祭の芝舞台が芝居の語源とされます。

そして、この祭礼の中心となる重要な役柄が「日使」です。おん祭を創始した関白・藤原忠通公がご奉仕のために大和に下向途中、にわかに差し障りがあり、供の楽人に自分の装束を着けさせ、その日の使いをさせたという故事に因み、若宮様の御神前で祝詞を奏上するという大変格式の高いお役目です。近年は、日本の経済界を代表する方々にご縁を得てご奉仕をいただいております。

燈籠の奉納

若宮様への御加護に感謝して燈籠奉納が始まり、やがて若宮社と御本社(大宮)とを結ぶ御間道の両脇には鎌倉時代後半より次々と石燈籠が奉納され、室町時代の全国の神社仏閣に奉納された燈籠の実に3分の2がここにあり、春日の神々に対する篤い信仰を物語っています。この若宮社参道への燈籠奉納が嚆矢となり、本来、御神前・御仏前に供える燈籠が、御本殿・御本堂へと続く参道に並べる習慣が全国へ広がっていきました。やがて燈籠奉納は春日大社の境内全域に及び、今日までに奉納された約3,000基もの燈籠は質量ともに日本一であり、これが日本中の石燈籠の多くが「春日燈籠」と呼ばれる所以です。

心を込めて…
若宮社のご神宝

若宮社御本殿には、平安時代以来奉納された大変すばらしい御神宝が納められ、神様のおそばで継承されてきました。およそ900年もの歳月、御本殿の中で戦乱に遭うことなく式年造替の度に受け継がれてきた御神宝は、現存すること自体が奇跡的な、唯一無二といわれる品ばかりです。昭和5年に御本殿より撤下され、現在49点が「若宮御料御神宝類」として国宝指定を受けています。これらは鳥羽上皇に関わる品々や、関白藤原忠実や息子の関白忠道、左大臣頼長のために作られた「毛抜形太刀」や「平胡簶」、「蒔絵弓」。また「金鶴及銀樹枝」や「銀鶴及磯形」、「銅造狛犬」や「白磁獅子」などその精緻な造りは優雅で美しく、日本を代表する第一級の工芸品です。
その中で特に国宝「金鶴及銀樹枝」、国宝「銀鶴及磯形」は平安時代の日記等の記述には出てくるものの、実物として現存するものは「若宮御料御神宝」のみです。
しかしながら、長承4年以来、800年ほど若宮様の元に納められていた御神宝が昭和5年に国により撤下され、大変申し訳なく思ってまいりました。 今次は、当代最高水準の卓越した技能を有する人間国宝 桂盛仁氏と、奈良一刀彫師 太田佳男氏により「金鶴及銀樹枝」、「銀鶴及磯形」を復興し、令和4年10月28日の本殿遷座祭にて92年ぶりに若宮様の元にお戻しいたします。
これは、若宮様に御悦び頂き、より一層、国民の繁栄と平和を守る御力を発揮して頂くための御奉納であります。
当代最高の素晴らしい品を神様に捧げることは、究極の感謝の表現であり、この行いを通じて、神様の尊さを再認識することが出来、そして更には神様の御存在を次の世代の人々に伝えるという大切な願いが成就されることともなり、まさしく神様への祈りの原点がここにあります。

日本最古の個人祈願所

– 若宮神楽殿と社伝神楽 –

若宮社は、天下国家の安泰を祈願する神社として創建されましたが、同時に個人の願いをも御聞き届けされた初めての神社として有名です。

御本殿前には神楽殿が建てられ、御巫が常駐し、個々人それぞれの願い事を託した御巫神楽が奉納されました。

古来より、伊勢神宮など国家の安泰を祈願する神社は「私幣禁断」とされ、春日大社も同様に個人的な祈願は行われませんでしたが、この若宮社の神楽殿が人々の個人的な御祈願所として初めて御巫神楽が奉納されるようになり、それが大変な人気となりました。その神楽鈴の音は終日止まず、延々と若宮御社頭に鳴り響いたと記されています。
そして、この御巫が奉納した若宮神楽殿は、日本最古の神楽殿として現在は重要文化財に指定され、奉納された御巫神楽は現在、「社伝神楽」として継承され、今も若宮での祭典の折に奉納されています。

守り伝えてゆくために

ご奉賛のお願い

守り伝えてゆくために

– ご奉賛のお願い –

平成28年11月6日、多くの方々のご協力により春日大宮(春日大社御本社御本殿)が見事に竣工し、正遷宮が賑々しく執り行われましたが、同時進行で継続事業として境内外に鎮座される62社の摂社・末社の御修繕を順次執り行ってまいりました。

 

平成19年に始まった第60次御造替事業も佳境となり、愈々、摂社 若宮社の御造替を以て完遂となります。令和3年4月23日、御神霊を御遷し申しあげる「仮殿遷座祭」が厳粛に斎行され、令和4年10月28日の本殿遷座祭に向け、御本殿の御修繕、境内整備が着々と取り進められております。

 

120年ぶりに20年に一度の正式な形に戻る重要な第43次若宮式年造替、御本殿の御修繕・周辺の整備を始め、事業を推進・完遂を目指すにあたり200,000,000円という費用が見込まれています。

 

御本殿など文化財指定建造物には一部公費による補助が予定されておりますが、境内周辺整備、調度品類の調製、諸祭典の執行による御神徳高揚など多岐に亘り、神社予定経費を大幅に超えることとなります。

 
つきましては、第60次式年造替継続事業〔境内鎮座摂末社の御修繕〕の締めくくりとなるこの大事業を、お一人お一人の真心の結集により、無事成し遂げ、若宮様の御神徳の一層の発揚と、かけがえのない文化伝統を後世に守り伝えてゆきたく存じます。
 
若宮様が、美しく竣工された御本殿、清浄な御神域に御悦びなられますよう真心を込めてご奉仕申しあげますので、ご賛同、ご協力くださいますようお願い申しあげます。

若宮御造替へのご質問、またご支援ご協力をご希望されます方は春日大社式年造替事務局へご連絡ください。折り返し担当よりご連絡させていただきます。

メールアドレス (imai@kasugataisha.or.jp)

諸儀式のスケジュール

木作始式
御造替初めの儀式にて釿始(ちょうなはじめ)が行われます

移殿御装束並清祓之儀

御仮殿を新調の装束で装い、お祓い申しあげます

六面神鏡奉遷之儀
御本殿正面に奉掲の六面の御神鏡を御仮殿にお遷し申しあげます
仮殿遷座祭
御本殿修繕のため御神霊を仮殿にお遷し申しあげます
御慶之舞楽
殿遷座祭の翌日、奉祝の舞楽が行われます
荒神祓之儀
立柱上棟祭に先立ち、若草山の石荒神社で奉仕者の清祓を行います
立柱上棟祭

一般でいう竣工祭にあたり、御本殿の完成を祝う儀式です

精進入り

自宅で「前精進」そして参籠し「正精進」の潔斎期間に入ります

御湯

この日より神社に籠り正精進に入る奉仕神職のお祓いを行います

立榊式

神山春日山より伐り出した大榊を一之鳥居に立てます

大宮奉告祭
若宮正遷宮の無事執行を大宮の神々に祈願奉告申し上げます
神宝検知之儀
新調の御神宝を遺漏なきよう確認します
御殿奉磨之儀
若宮御本殿々内の御床を御清め致します
御神宝清祓之儀
新調の御神宝のお祓いを致します
殿内御飾之儀
御本殿々内を新調の御神宝・装束で装い申しあげます
六面神鏡奉下之儀
御仮殿正面に奉掲の六面の御神鏡を奉下申しあげます
御殿清祓之儀
御本殿々内をくまなくお祓い致します
具足洗・薫
正遷宮奉仕の為、水谷川の水と沈香で神職の装束をお清め致します
本殿遷座祭
新装の若宮御本殿に御神体を御遷し申しあげます

奉祝祭

奉賛者はじめ関係者を招き奉祝のお祭りが行われます
(午前・社伝神楽奉納、午後・後宴之舞楽奉納)

奉祝行事

正遷宮を奉祝し数日にわたり数々の奉納行事が行われます

魚始之祝儀

遷宮諸祭のため長く身心の清浄につとめてきた奉仕員は、この祝宴をもって常態に戻ります

※祭典執行につきましては、諸事都合に依リ日時等変更することがあリます